15歳の君へ
15歳の自分。あの時にタイムリープして、自分が自分に会いにいく。
ドアを薄く開け、僕は中を覗き込んだ。「彼」は自室で、ストーンズを聴きながら、サッカーのスパイクを磨いている。新聞紙の上には、右のスパイクと二足分のシューレース。小刻みに肩を揺らしながら、シューズについた泥をブラシで落としている。夏だ。もうすぐ、新人戦が始まるのだろう。
防災無線から「夕焼け小焼け」が流れてきた。「僕」は、うっすらとオレンジ色に染まった部屋のドアをそっと閉める。彼の、真っ直ぐで、希望だけが支配をしている瞳を見ることに、これ以上は耐えられなくなったから。
もし、生まれ変わることができたとしても、僕はおそらく同じような人生を歩むことになるだろう。その意味で、この半生に後悔はしていない。けれども、15歳の君には、あやまりたい。それなりにがんばったつもりだけれど、こんな風にしかなれなかったよ。ごめんな、と。