コンポジション

地味なブログです。お役立ち情報は皆無です。感じたこと、思ったこと、考えたことを、ぽつりぽつりと書いています。受け売りではなく、自分で考えたことを書くようにしています。嘘や誇張もできるだけないように、と思いながら書いています。写真も公開する予定です。

一行詩 #001

paint:Gerhard Richter words:shimanite 自由律俳句と一行詩は見た目がとてもよく似ていて、どこかどう違うのという感じなのですが、自分の中ではけっこう明確な区分がありまして、自由律俳句は、外からやってきて自分に反射していく感じ。一行詩は、自分…

それ、本当の言葉じゃないから

2008年の冬だったと思う。サービスが始まったばかりの「ニコニコ生放送」(以下、ニコ生と略)が物珍しくて、2週間ほど集中的に観ていた時期がある。当時から「ネトラジ」と呼ばれる音声のみのストリーミングサービスはあったが、一般の人々がライブ映像を…

六角形の棺

7月5日、早朝、バングラデシュでテロの犠牲になった7人と遺族を乗せた政府専用機が、羽田空港に到着した。遠くから望遠レンズで切り取られたその光景は、現実感が希薄で、まるでドラマの再放送を観ているようだ。僕は歯ブラシをくわえたまま、ぼんやりとテ…

ぼくは「君が代」が歌えない

「君が代」が好きだ。華やかさや勇壮さに欠けているとしても、荘厳でどこか寂寥感をたたえた旋律は、いかにも日本的で美しいと思う。海外のスタジアムで代表選手が一列に並び「君が代」を歌う。スタンドで揺れる日の丸の小旗。そんな光景は、なんど見ても胸…

自由律俳句 #004

自由律俳句は、五七五の音数や季語や切れ字にとらわれることなく、文字通り自由に詠まれた俳句です。代表的な俳人に、種田山頭火、尾崎放哉、住宅(すみたく)顕信らがいます。詳しくはこちらをどうぞ。自由律俳句(ウィキペディア)

Cの物語

大人の話を襖越しに聞くことが好きだった。その話がミステリアスであればあるほど胸を躍らせた。そして、不思議なことに、そのたぐいの話は今でも鮮明に覚えている。 僕は、北海道の室蘭という地方都市で生まれ育った。町の中心部から高台に向かって急勾配の…

螺旋階段の上と下で

「その犬と豚のどこがどう違うんだ?」 高校1年の秋だったと思う。その日は、朝から冷たい雨が降っていた。シャッターの降りた八百屋の軒下。ダンボールの中で子犬が震えていた。箱にはタオルが敷き詰められていたが、糞尿のせいですっかり汚れていた。子犬…

掌編小説 コリオリの力

羊水に浸っていたのは、自分ではなかったのか、と思うことがある。 その日、東の海上から張り出した1014ミリバールの移動性高気圧が日本列島全体を包み込み、朝鮮半島の北西部では低気圧が発達しつつあった。 東高西低。「鯨の尾」と呼ばれる典型的な夏型の…

どこに住もうか

真球になりたかった。 どこを測定しても寸分たがわぬ精度で、傷ひとつないなめらかさで、銀色の光沢を放つ硬度で、転がり続けたかった。真球を意識しながら生きてきたわけではない。けれども、気づくといつも転がっていたように思う。 目についたものは、な…

どうぞ、まっすぐ、みてください

小さくて大きな広告の話をします。 媒体は、テレフォンカード。広告主は、体の不自由な人の自立支援を行っているNPO「札幌いちご会」。コピーライターは、糸井重里さん。ビジュアルは、アンティークのサルのぬいぐるみ。よく見ると、サルの片一方の手はとれ…

自由律俳句 #003

自由律俳句は、五七五の音数や季語や切れ字にとらわれることなく、文字通り自由に詠まれた俳句です。代表的な俳人に、種田山頭火、尾崎放哉、住宅(すみたく)顕信らがいます。詳しくはこちらをどうぞ。自由律俳句(ウィキペディア)

寓話 アライさん

アライグマを見ていた。かれこれ10分はたったと思う。水あめを薄く溶かしたような小川の、苔むした石に腰掛けて、体のあちこちを一心不乱に洗っている。僕は彼の気を散らさないよう、そっと近づいて声をかけた。 「いったい、そこで、なにを洗っているの?」…

色を聞く

数週間前から気になっていた文章が、発掘されました。1984年にオンエアされたラジオCMのナレーション原稿。 書いたのは、寺山修二さん。どうしても、もう一度読みたくて探していたのですが、見つからなかった。あきらめかけたいたときに、ひょっこり出てきま…

イレイサーヘッド

これは、僕が小学校の2年か3年生の時のお話です。 生家では、よほどのことがないかぎり、家族全員で食卓を囲む、というのが暗黙のルールでした。しかし、食事中に家族で楽しく会話をした、という記憶がほとんどありません。テレビはいつも消されていたし、必…

自由律俳句 #002

自由律俳句は、五七五の音数や季語や切れ字にとらわれることなく、文字通り自由に詠まれた俳句です。代表的な俳人に、種田山頭火、尾崎放哉、住宅(すみたく)顕信らがいます。 詳しくはこちらをどうぞ。自由律俳句(ウィキペディア)

掌編小説 バンビ

悟は、鳩が何羽いるのか数えていた。十羽目からは面倒になって、カフェテリアとテラスを隔てている「はめ殺し」の大きなガラス窓をぼんやりと眺めていた。それにしてもこいつらは四六時中なにを啄(つい)ばんでいるのだろう。毛虫? ポテトチップスの食べか…

テイスト オブ ハニー

テレビ局、とくに民放は、人々が観たい番組を制作し放送する。視聴率を度外視して、自分たちの作りたいものだけを作る、というスタンスは成立しない。視聴率ありき。より多くの人に観てもらうことによって、採算を取っているのだから、当たり前の話だ。利益…

ワタシはアナタで、アナタはワタシ

ツイッターのタイムラインをぼんやりながめる。 すき。きらい。本当にその通り。だいたい賛成だけど、そこは違うと思う。不快。もっと知りたい。わかった。わからない。不安になる。怖い。かわいい。本当かな。嘘かも。楽しそう。おいしそう。きれい。なつか…

自由律俳句 #001

自由律俳句は、五七五の音数や季語や切れ字にとらわれることなく、文字通り自由に詠まれた俳句です。代表的な俳人に、種田山頭火、尾崎放哉、住宅(すみたく)顕信らがいます。詳しくはこちらをどうぞ。自由律俳句(ウィキペディア)

ちょっとまて

ここ数年で、スマホやパソコンにふれなかった日は、あっただろうか。仕事のある平日はもちろん、歩いて5分のコンビニに行くときでさえ、玄関先でポケットのスマホを確認している。四角く硬い感触がそこにあると、土に触ったような安心感がある。たかだかコ…

キリンの子

昨日、いや、正確には一昨日の夜。たまたまテレビのスイッチを入れると、歌人の鳥居さんが写っていた。「鳥居」は、姓でも名前でもなく、彼女全体で鳥居さんだ。「彼女全体」という表現は、なんだかヘンだけど。 番組はドキュメンタリー風ではあるが、広い意…

地球儀の 3.11

仕事部屋に、古い地球儀があります。直径は約35センチ。ずいぶん前に、古道具屋で購入したものです。朝鮮半島に国境線が引かれていないので、1950年前後に作られたものだと思います。 3.11以来、なにかの拍子にこの地球儀の、三陸の、リアス式海岸を指でなぞ…

バスも飛行機も三輪車も

バンドの「スーパーカー」が好きで、作家の中上健次が好き。 両者をご存知の方なら、おわかりになると思うのですが、この二組を乗り物にたとえるなら、飛行機と路線バスのような関係で、一見するとどこにも共通点が見当たらない。僕の場合、一事が万事この調…

15歳の君へ

15歳の自分。あの時にタイムリープして、自分が自分に会いにいく。 ドアを薄く開け、僕は中を覗き込んだ。「彼」は自室で、ストーンズを聴きながら、サッカーのスパイクを磨いている。新聞紙の上には、右のスパイクと二足分のシューレース。小刻みに肩を揺ら…

ブランコをこぐ少女

かれこれ15年以上前の話です。雑誌『WIRD 日本語版』にこんなインタビュー記事が掲載されていました。取材に答えていたのは、孫正義氏です。 記者の「なぜあなたは、それほどまでに夢中で仕事をしているのか」という問いかけに、彼はこんな風に答えていまし…